考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法
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一方で、知的生産ではどうだったか。 5000を越えて集まった 「アイデアノート」 は、ほとんど使われることのないまま保存されていた。 アナログのツールなら 「ほこりを被っている」 という表現がピッタリだ。アイデアは保存はされている。 しかも、一つの箱に配列されている。 検索すれば目的のものは見つかる。でも、それだけなのだ。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 20ページ では、どんな操作ができればいいのか。 それについて考える前に、ここで私なりのアイデアの定義を提出しておこう。 「その時点では具体的な用途が決められない、 ちょっとした思いつき」 注意していただきたいのは、この定義はあくまで情報整理におけるアイデアの定義である点だ。 言い換えれば、「いかに情報を扱うのか」という視点からアイデアを定義している。 そして、 この定義に従えば、 アイデアとは 「どう扱うのかその時点では決められない」 情報ということになる。 たとえば「この思いつきは、明日のブログで使おう」と判断できるなら、それはアイデアではない。 それはネタになる。 ネタに関してはネタ帳に保存すればいい。しかし、ネタでないものはネタ帳には保存できないし (定義から言ってそうなる)、 ネタと同じような扱い方もできない。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 30ページ 強調引用者 デジタル環境では、情報はキーワード検索で見つけられる。 探す対象が1000であろうが1万であろうが、キーワードでばしっと絞り込める。 アナログで1万の書類が目の前に広がっていたら、ほとんど絶望するしかないが、デジタルではそうした規模の問題を易々と超えられるわけだ。 しかし、「探せば見つかる」の裏を返せば「探さないと見つからない (目に入らない)」のである。 ここでアイデアの性質が問題になってくる。アイデアは探さないのだ。もっと言えば 「探せない」のである。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 35ページ 私のその勘違いは、 Evernoteや Workflowyを使っているときからすでに生じていた。Evernoteでも、それぞれのノートを付箋のように動かせる機能を求めていたし、Workflowyでもアイデアを書き留めた項目をあたかも付箋であるかのように扱っていた。 しかし、 梅棹は述べている。 「カードはメモではない」 カードはノートでもなく、メモでもない。 カードは、 カードなのだ。 保存した情報を付箋のように操作したいという希望は、それを 「メモ」 として扱っていることを意味する。 つまり、 私は何度も 『知的生産の技術』 を読みながらも、カードをメモのように扱おうとしていたわけだ。 これはかなり恥ずかしい話だろう。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 40ページ カード法においてカードを書くときは、どんなテーマで使われるかを考えないようにする。 言い換えれば、どのようなテーマでも使われうるように書く。 再三注意しておくが、ここでの「使う」 はそのままコピペして素材に利用することを意味していない。 あくまで自分が何を考えてきたのかを参照することだけだ。 そうした「参照する」という使い方に適したようにカードを書くこと。 脱文脈的に、 非テーマ的に書くこと。これが肝心である。 しかし、 普段からテーマに紐付けるように文章を書く癖がついていると、 これがなかなか難しい。 つい何かしらのテーマを念頭においた文章を書いてしまうのだ。 これを脱するためには、ある程度意識的な訓練が必要だろう。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 61ページ その思考を回避して、ルールのもとでハッシュタグをつけたり、 機械的にキーワードをリンクにしているのならば、何もしていないのに何かした気にだけなってしまう。 おそらく、 脳的にはそうしてハッシュタグをつけたものは「片づいた」 ことになって、 逆にもう思い出せなくなるだろう。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 ・ 87ページ 完全なライブラリを目指すのではなく、混沌を混沌のまま育てていくこと。本書ではこれを《断片的に進める》と呼んでみよう。 大きく完全な構造のもので情報を「整理」 しきらない姿勢のことだ。 この 《断片的に進める》を可能にするのが 《断片的に書く》ことだ。《断片的に書く》 から 《断片的に進める》ことができる。両者は対の関係にある。考えの育て方: 知的生産のデジタルカード法 / 倉下忠憲 113ページ 強調引用者